『約束』-300字SS
Twitter企画、300字ss。
今月のお題は『約束』。
<鎖>
オリジナル
<契約の土地>
科楽倶楽部さんの世界観。多分。
乗り込む前。
<ゆびきりげんまん>
タブレットマギウスより。
改行、空白文字抜き。300字以内。
今月のお題は『約束』。
<鎖>
オリジナル
<契約の土地>
科楽倶楽部さんの世界観。多分。
乗り込む前。
<ゆびきりげんまん>
タブレットマギウスより。
改行、空白文字抜き。300字以内。
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<鎖>/オリジナル
硬く鋭くキラリと光る。延びた鎖は保護者の手に握られている。
「夕飯までには帰っておいで」
首元に革のベルトがあるわけではなかったけれど。
はいと頷く。しゃらりと鎖が音を立てる。
名札をつけて、テストへ記名し。
契約書。誓約書。申込書に署名捺印。
書くたびに押すたびに。鎖の音が聞こえてくる。
約束はいつも僕を縛る。鎖は腕に重く食い込む。
鎖を引きずり空を仰ぐ。青々と遠く高くどこまでも。
もしも鎖がなかったなら。
差し出された細い小指に恐る恐る小指を絡める。
揃いの指輪を互いの薬指にはめ合って。
冷たく高く鎖が擦れる音を聞きながら。
鳥は天上を頼るものなく飛んでいく。
葛藤もしがらみも人の世になど見向きもせずに、どこまでも。
硬く鋭くキラリと光る。延びた鎖は保護者の手に握られている。
「夕飯までには帰っておいで」
首元に革のベルトがあるわけではなかったけれど。
はいと頷く。しゃらりと鎖が音を立てる。
名札をつけて、テストへ記名し。
契約書。誓約書。申込書に署名捺印。
書くたびに押すたびに。鎖の音が聞こえてくる。
約束はいつも僕を縛る。鎖は腕に重く食い込む。
鎖を引きずり空を仰ぐ。青々と遠く高くどこまでも。
もしも鎖がなかったなら。
差し出された細い小指に恐る恐る小指を絡める。
揃いの指輪を互いの薬指にはめ合って。
冷たく高く鎖が擦れる音を聞きながら。
鳥は天上を頼るものなく飛んでいく。
葛藤もしがらみも人の世になど見向きもせずに、どこまでも。
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<契約の土地>/科楽倶楽部
裏切りと我が主は私をなじるだろうか。
*
批難か羨望か諦めか。数多の視線を浴びながら、私は最後の荷物を取り上げる。
研究と着替えと使い慣れた経典と。思い出の詰まったメモリーチップと。
行ってきますと言いかけて。
「さようなら」
言葉を変えて、背を向けた。
「祝福を!」
甲高い声だった。
風が渡る。靴がざりりと砂を噛む。
「祝福を」
間を置いて落ち着いた声が。
「祝福を」
続くように慌てた声が。
祝福を祝福を。
車に乗り込み顔を伏せる。景色が歪む。意匠化した我が主の印が胸元で揺れている。
*
知らないものを知ろうとしなさい。
立つ場所を探しなさい。
約束の地はきっと貴女を祝福します。
*
地球の上での契約の中の。
約束の地を私は捨て去る。
裏切りと我が主は私をなじるだろうか。
*
批難か羨望か諦めか。数多の視線を浴びながら、私は最後の荷物を取り上げる。
研究と着替えと使い慣れた経典と。思い出の詰まったメモリーチップと。
行ってきますと言いかけて。
「さようなら」
言葉を変えて、背を向けた。
「祝福を!」
甲高い声だった。
風が渡る。靴がざりりと砂を噛む。
「祝福を」
間を置いて落ち着いた声が。
「祝福を」
続くように慌てた声が。
祝福を祝福を。
車に乗り込み顔を伏せる。景色が歪む。意匠化した我が主の印が胸元で揺れている。
*
知らないものを知ろうとしなさい。
立つ場所を探しなさい。
約束の地はきっと貴女を祝福します。
*
地球の上での契約の中の。
約束の地を私は捨て去る。
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<ゆびきりげんまん>/タブレットマギウス
ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます
ゆびきった!
*
子供の頃に幾度となく交わした約束の、締めは必ずコレだった。
小指を絡めるまでは同じ。相方は指輪を差し出してきた。
「約束の印」
笑顔が悪戯っ子のものだったことには気付いていた。
*
「約束あるんじゃない?」
「君の方が大事」
言って傾けたカクテルは、知らぬ間に無数の針に変わっていた。
「スマホの電源、切って良いの?」
「無粋だろ」
持ち上げたペットボトルには針がぎっしり詰まっていた。
*
ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます
タブレットを持ち上げて、相方は笑い、唄う。
指が画面をタップする。
ペットボトルの針が輝き、元のお茶に戻っていく。
ゆびきった!
ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます
ゆびきった!
*
子供の頃に幾度となく交わした約束の、締めは必ずコレだった。
小指を絡めるまでは同じ。相方は指輪を差し出してきた。
「約束の印」
笑顔が悪戯っ子のものだったことには気付いていた。
*
「約束あるんじゃない?」
「君の方が大事」
言って傾けたカクテルは、知らぬ間に無数の針に変わっていた。
「スマホの電源、切って良いの?」
「無粋だろ」
持ち上げたペットボトルには針がぎっしり詰まっていた。
*
ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼん のーます
タブレットを持ち上げて、相方は笑い、唄う。
指が画面をタップする。
ペットボトルの針が輝き、元のお茶に戻っていく。
ゆびきった!
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by morimura_naoya
| 2018-07-07 21:00
| その他創作