『休』-300字SS
Twitter企画、300字ss。
今月のお題は『休』。
<安息日の行方>
オリジナル。神話語り風?
<Game Over>
科楽倶楽部さんの世界観。多分。
三世代目くらい
<要件定義は明確に>
タブレットマギウスより。
改行、空白文字抜き。300字以内。
===============================
<安息日の行方>
絶対唯一の神様は、安息日にも働く人々を休ませることを決めました。
預言者の言により、社会組織は休みになりました。
官庁も。
企業も。
商店も。
交通機関も。
聖職者ももちろんお休みです。
けれど、子の親は休めませんでした。
人々のために働く人々も休めませんでした。
神様はお休みを徹底させました。
電気も。
ガスも。
水道も止まりました。
そして神様は、子の親を休めるために子の時を止めました。
人々は、何をすることもありませんでした。
そしてただ、休むために眠りました。
安息日は、眠りの中で過ぎていきました。
安息日の明けた朝。人々はよく眠ったと伸びをして、日常を続けました。
神様の設けた安息日は、そうして、夢の狭間に消えました。
<Game Over>
再生ボタンを押すと、静寂に響いていた衣擦れと自分の吐息に代わって、民族音楽とも流行歌ともつかない曲が流れ出す。
見たこともない故郷が高らかに歌われる。見ることもない新天地を思う。たからものを結ぶ船の、結ぶためだけの機関に触れてそっと小さな背を預ける。
熱力学、流体力学、電磁気学、量子力学。
材料工学、機械工学、それから、それから。
それから。
君が見せる笑顔よりも――動くところを見ることが決して出来なかったとしても。
曲が終わる頃には、思考は冴えて吐く息は白く、頭も身体も芯まで冷えていた。
温まった場所から背をはがし、傍らの小さな扉を押し開ける。
立ち入り禁止の文字を背後に歩き出す。
休憩はもう終わりなのだ。
<要件定義は明確に>
『聾唖でも楽しめるコンサート』
音階で色が変わる。音の振動をもっと大きく。波形を表示してみたら。
会議の最中、その発言は飛び出した。
「音符が踊るってのはどう?」
*
長さで音符を選択し、音色でさらに修飾する。高低を決定したら、ホールの上に飛んでいく。
音色分析の専門家に助言を貰い、波形検出器メーカーを協賛に付け、野良プログラマをスタッフで一本釣りし、同じく野良の電書魔術師をこちらは難題で引き寄せた。
素人ピアニストが蓋を開ける。バイオリン教師が弓を構える。路上ドラマーがパーカッションでリズムを刻み。音符が空中に飛び出して。
やがて休符で埋め尽くされた。
*
「楽曲の終了条件は?」
魔術師はきょとんと首を傾げる。
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今月のお題は『休』。
<安息日の行方>
オリジナル。神話語り風?
<Game Over>
科楽倶楽部さんの世界観。多分。
三世代目くらい
<要件定義は明確に>
タブレットマギウスより。
改行、空白文字抜き。300字以内。
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<安息日の行方>
絶対唯一の神様は、安息日にも働く人々を休ませることを決めました。
預言者の言により、社会組織は休みになりました。
官庁も。
企業も。
商店も。
交通機関も。
聖職者ももちろんお休みです。
けれど、子の親は休めませんでした。
人々のために働く人々も休めませんでした。
神様はお休みを徹底させました。
電気も。
ガスも。
水道も止まりました。
そして神様は、子の親を休めるために子の時を止めました。
人々は、何をすることもありませんでした。
そしてただ、休むために眠りました。
安息日は、眠りの中で過ぎていきました。
安息日の明けた朝。人々はよく眠ったと伸びをして、日常を続けました。
神様の設けた安息日は、そうして、夢の狭間に消えました。
<Game Over>
再生ボタンを押すと、静寂に響いていた衣擦れと自分の吐息に代わって、民族音楽とも流行歌ともつかない曲が流れ出す。
見たこともない故郷が高らかに歌われる。見ることもない新天地を思う。たからものを結ぶ船の、結ぶためだけの機関に触れてそっと小さな背を預ける。
熱力学、流体力学、電磁気学、量子力学。
材料工学、機械工学、それから、それから。
それから。
君が見せる笑顔よりも――動くところを見ることが決して出来なかったとしても。
曲が終わる頃には、思考は冴えて吐く息は白く、頭も身体も芯まで冷えていた。
温まった場所から背をはがし、傍らの小さな扉を押し開ける。
立ち入り禁止の文字を背後に歩き出す。
休憩はもう終わりなのだ。
<要件定義は明確に>
『聾唖でも楽しめるコンサート』
音階で色が変わる。音の振動をもっと大きく。波形を表示してみたら。
会議の最中、その発言は飛び出した。
「音符が踊るってのはどう?」
*
長さで音符を選択し、音色でさらに修飾する。高低を決定したら、ホールの上に飛んでいく。
音色分析の専門家に助言を貰い、波形検出器メーカーを協賛に付け、野良プログラマをスタッフで一本釣りし、同じく野良の電書魔術師をこちらは難題で引き寄せた。
素人ピアニストが蓋を開ける。バイオリン教師が弓を構える。路上ドラマーがパーカッションでリズムを刻み。音符が空中に飛び出して。
やがて休符で埋め尽くされた。
*
「楽曲の終了条件は?」
魔術師はきょとんと首を傾げる。
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by morimura_naoya
| 2017-08-05 21:00
| その他創作