『のむ』―300字SS
Twitter企画、300字ss。
今月のお題は『のむ』。
飲む、呑む、飲み込む…。
<宇宙(そら)の彼方の水の味>
ジャンル:移民船企画、第三世代の一場面
改行、空白文字抜き。300字以内。
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<宇宙(そら)の彼方の水の味>
小川でよく遊んだわ。陽射しは枝葉の間を抜けて、水面できらきら反射するの。緑の風が吹き抜けてきて。
咽が渇いたら沸き水を飲むの。冷たくて美味しい。味なんてないのにね。
祖母は彼方の故郷を見つめながら、咽を鳴らして水を飲む。
ほら、夕立が。
零れた水がシーツにシミを作っていく。手から抜け落ちコップが乾いた音を立てる。
何かを受け止めるように伸ばされた手は、何も掴まずシーツに落ちた。
「ワキミズは飲めた?」
コップを拾う。水玉の中で祖母は静かに微笑んでいる。
「でもさ」
雲が薄く向こうを隠す。風がカーテンを揺らして過ぎて、淡く光が入り来る。
「私の故郷は酷いところなんかじゃないよ」
――美味しい水なんて、知らないけれど。
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今月のお題は『のむ』。
飲む、呑む、飲み込む…。
<宇宙(そら)の彼方の水の味>
ジャンル:移民船企画、第三世代の一場面
改行、空白文字抜き。300字以内。
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<宇宙(そら)の彼方の水の味>
小川でよく遊んだわ。陽射しは枝葉の間を抜けて、水面できらきら反射するの。緑の風が吹き抜けてきて。
咽が渇いたら沸き水を飲むの。冷たくて美味しい。味なんてないのにね。
祖母は彼方の故郷を見つめながら、咽を鳴らして水を飲む。
ほら、夕立が。
零れた水がシーツにシミを作っていく。手から抜け落ちコップが乾いた音を立てる。
何かを受け止めるように伸ばされた手は、何も掴まずシーツに落ちた。
「ワキミズは飲めた?」
コップを拾う。水玉の中で祖母は静かに微笑んでいる。
「でもさ」
雲が薄く向こうを隠す。風がカーテンを揺らして過ぎて、淡く光が入り来る。
「私の故郷は酷いところなんかじゃないよ」
――美味しい水なんて、知らないけれど。
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by morimura_naoya
| 2016-07-02 21:40
| その他創作